Research
研究紹介
Summary
分子シミュレーションによる
高効率かつ高耐久性に
優れた材料設計や
新機能の創成を目指しています。
分子シミュレーションによる
高効率かつ高耐久性に優れた材料設計や
新機能の創成を目指しています。
現在、計算科学は、実験・観測、理論と並ぶ重要かつ最先端の科学技術として、あらゆる分野に適用されています。我々は、特に原子・分子スケールでの振る舞いに着目し、主に4つの研究に力を入れて取り組んでいます。
01
不均一場における
高精度計算手法の
開発と応用
現在、ナノ材料研究等において、実構造を反映した数nmサイズの系を高精度に取り扱い可能な電子状態計算手法が必要となっています。平面波基底(PW)に基づく計算手法は周期境界条件を利用することで固体や表面モデルの電子状態計算に広く利用されていますが、金属ナノ粒子への吸着や化学反応といった不均一反応場での局所的な化学・物理現象に対して十分な精度を与えていると言い難い場合もあります。一方、局在基底(LO)に基づく計算手法は高精度な電子状態計算が可能で、軌道の概念から化学現象を理解するうえで有用な情報を得ることが期待できますが、大規模計算への単純な拡張が容易ではありません。私たちは、金属などの電子状態計算にはPW、局所的な電子状態計算にはLOを用いる平面波局在基底ハイブリッド電子状態計算手法(CPLB法)を開発しています。
参考文献
- Hiroki Sakagami, Masanori Tachikawa, and Takayoshi Ishimoto, “Theoretical study of H/D isotope effect of CH4/CD4 adsorption on Rh(111) surface using combined plane wave and localized basis sets method” RSC Advances, 11, 10253-10257 (2021).
- Takayoshi Ishimoto and Hiroyuki Kai, “Combined plane wave and localized orbital electronic structure calculation: Adsorption energy of hydrogen on Pd(111)” International Journal of Quantum Chemistry, 118, e25452 (2018).
02
重水素に関連した
計算手法の
開発と応用
重水素は水素の同位体であるため、質量の違いを除き化学的・物理的性質はほぼ等価である、と考えられていました。しかしながら、水素結合構造や化学反応、イオン化エネルギーなどの電子物性が水素・重水素化物質で大きく異なることは実験的な多くの報告から明らかです。このような問題を電子状態計算で解明するためには重水素化物質の電子状態を正しく記述する必要がありますが、Born-Oppenheimer(BO)近似に従う現在の電子状態計算は、重水素原子核の影響を取り込むことが困難です。我々は、これまでに開発してきたnon-BO型の電子状態計算手法を発展・深化させ、高精度・大規模計算を可能とする理論の開発・実装に取り組んでいます。
参考文献
- Yuka Kimura, Yusuke Kanematsu, Hiroki Sakagami, David, Samuel Rivera Rocabado, Tomomi Shimazaki, Masanori Tachikawa, and Takayoshi Ishimoto, “Hydrogen/deuterium transfer from anisole to methoxy radical: A theoretical study of a deuterium-labeled drug model” Journal of Physical Chemistry A, 126, 155-163 (2022).
- Takayoshi Ishimoto, Masanori Tachikawa, and Umpei Nagashima “Review of multicomponent molecular orbital method for direct treatment of nuclear quantum effect” International Journal of Quantum Chemistry, 109, 2677-2694 (2009).
03
モデルベース
研究に基づく
材料開発
省エネルギー社会の実現や大幅やCO2放出量削減のためには、革新材料の創出を実現することが不可欠ではありますが、例えば、熱マネジメント材料で重要な耐熱性と熱伝導率といった背反する両者の特性を同時に向上させることは、もはや勘と経験に頼った従来型の材料開発では限界があります。産業の基盤である材料に対する要求が高度化・多様化する中で、迅速かつ高効率に既存材料の機能を大幅に上回る革新的な材料設計を実現するために、我々は、材料の機能・性質といった本質的・基礎的理解を徹底的に推進するための材料モデルベース研究(材料MBR)という新たな材料開発アプローチを提案しています。材料MBRでは、ミクロの領域での高度な観測や分子シミュレーションによって、原子・分子スケールでの材料の機能・特性を理解し、数式モデルを構築し、得られた数式モデルに基づき要求性能を満たす材料を提案し、実験系研究室との連携で合成・検証していきます。
04
産学連携による
研究開発
産業界との連携による課題解決型の基礎研究にも積極的に取り組んでいます。お気軽にご連絡ください。
参考文献
- Osamu Kobayashi, Kunihiko Noda, Naohiko Ikuma, Dai Shiota, Takayoshi Ishimoto and Masanori Tachikawa, “Experimental and computational analyses of the oxidation mechanism of the poly(arylsilane) family as the side reaction during the baking process” Journal of Physical Chemistry C, 124, 16149-16158 (2020).
- Yasuhiro Matsumura, Yuki Koda, Hiroshi Yamada, Masahiko Shigetsu, Akihide Takami, Takayoshi Ishimoto, and Hiroyuki Kai, “Experimental and computational studies of CO and NO adsorption properties on Rh-based single nanosized catalysts” Journal of Physical Chemistry C, 124, 2953-2960 (2020).